鍼は魔法ではないからこそ。最新科学と目の前の患者さんに向き合うということ
先日、「現代医療鍼灸臨床研究会」に参加し、最新の「鍼通電療法(鍼に心地よい電気を流す施術)」について学んできました。
今、この分野の科学的根拠(エビデンス)の蓄積は過去最高レベルに達しており、電気を流す機械自体の性能も上がったことで、とても注目が高い分野です。
■ 鍼に電気を流すと、体の中で何が起きている?
最新の知見では、鍼に電気を流すことで、その刺激が「脳(中枢)」にまで届き、身体全体のシステムを動かすことが明確に示されています。
【脳と神経への主なアプローチ】
脳からの指令: 脳から痛みを抑える物質や、リラクゼーションに関する神経伝達物質が出ることで、痛む場所だけでなく全身のバランスを整えます。
周波数の使い分け: 症状に合わせて電気の波(周波数)を使い分けることで、より狙い通りの作用を引き出す研究が進んでいます。
■ 「鍼は魔法ではない」からこそ、難しい
こう書くと、まるで鍼通電がどんな症状も一瞬で解決する「魔法」のように聞こえるかもしれません。しかし、現実の臨床はそんなに単純ではありません。
実は、「同じ場所に同じように鍼をしても、患者さんのその時の病態によって、体の中の反応は全く異なる」からです。
例えば、おもしろい研究データがあります。
同じように鍼をしても、「肩こりを強く自覚している人」のほうが、そうでない人に比べて、施術後の筋肉の血流が上がることが分かっています。 痛みや不快感を持っている人と、そうでない人は、神経や脳など身体の状態が異なっているため、鍼に対する反応が変わるのです。
患者さんのお話を丁寧に聞き取り、今のお体に合わせた「しかるべき場所」を正確に見つけ出して鍼を入れる。これは、決して簡単なことではありません。
■ 「どこに行っても同じ」ではない、鍼灸の奥深さ
一般的に「鍼灸院なんて、どこに行っても大体同じ」と思われている方も多くいらっしゃると思います。
しかし実際のところ、私たち鍼灸師はそれぞれ学んでいる分野もアプローチの仕方も全く違います。最先端の科学をベースにするのか、伝統的な手法をベースにするのかでも変わってきます。
1本の鍼を体に受けたとき、体の中では様々な機能が同時に活性化されます。だからこそ、「この作用が、今の目の前の患者さんにどう働いているのか」を100%予想することは不可能です。
だからこそ私は、「学んだ技術がすべてと思わず、常に臨床応用していく立場」でありたいと思っています。施術中の受け心地や、その後の細かな症状の変化にどこまでも細心の注意を払うこと。この原点は、どれだけ科学が進歩しても変わらないと思います。
■ さいごに
「これさえやれば治る」という魔法はありません。
ですが、つらい痛みや不調に対して、「今よりもっと良い変化を出せるかもしれない選択肢」を新しく知ることは、私にとって本当にワクワクしますし、鍼灸師としての使命だと感じています。
新しくアップデートした知識を活かしながら、これからも皆さんの心と体に向き合ってまいります。
最近お体がすっきりしないなと感じる方は、ぜひお気軽にご相談くださいね。
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