心の持ち方は、人生を再び豊かにする力へ
―東洋医学の「心身一如」から考える、心の健康
東洋医学には「心身一如(しんしんいちにょ)」という考え方があります。
これは、心と体は切り離せず、常に相互に影響し合うという意味です。
心が乱れれば体のバランスも崩れ、体の不調が続けば心にも影を落とします。
風邪をひいている時、なんとなく気分が落ち込むことは誰しもあると思います。
また、明日から楽しい旅行だ・・・と思うとワクワクして寝付けない、ということもありますよね。
身体と心は密接なつながりがあることは、経験上、ご存知かと思いますが、
普段は身体のケアことは気にしていても、心の持ち方までは・・・という方が多いのではないでしょうか。
心身一如、この思想は、数千年にわたる観察と臨床の積み重ねに基づいています。
例えば、怒りは「肝」に、思い悩みは「脾」に、悲しみは「肺」に影響すると考えられています、
感情と臓腑の働きは密接に結びついており、心を整えることが、体の治癒にもつながる力を持っています。
【五臓と心の関係を表した五行説】
肝・・・怒り
心・・・喜び(心臓がどきどきするような興奮状態)
脾・・・思い悩む
肺・・・悲しみ
腎・・・不安
母の歩みから見えた「心の回復」
私の母は、52歳のときに脳の血管奇形(AVM)による出血で倒れ、右半身に麻痺と言語障害が残りました。
当初は「この身体で生きていても意味がない」と深いうつ状態に陥り、私たち家族も一緒に胸を痛めました。
しかし、福祉や介護の支援を受けながら、少しずつ「今ある身体で生きる」ことを受け入れていきました。
その過程は決して平坦ではありませんでしたが・・・
人の心は、理屈だけでは立ち上がれません。
けれど、支援という外からの力と、「生きたい」という内側からわく意志が少しずつ結びつくとき、
心は再び自らの方向を見出すのだということも、私たちは母から学ばせてもらいました。
心の健康とは「受け入れの力」
約25年の年月を経て、今の母は、季節の移ろいを楽しみ、周りに感謝の気持ちを伝え、天然なふるまいで周りを笑わせます。病前よりも明るく、屈託のない表情で笑う姿を見ると、まるで本来の自分に還っているような気がしています。
そこには、自分にやってくるもののすべてを、そのままに受け入れた強い心があると感じています。
心の健康とは、決して「常に前向きであること」ではありません。
むしろ、変化や喪失を受け入れながら、「今の自分」を受容する力ではないでしょうか。
東洋医学で言う「調和」とは、何も問題がない状態ではなく、
不完全さを抱えたままでも、自然のリズムと再びつながっていくことだと思っています。
心身一如の実践へ
心の持ち方は、誰にも奪えない自由です。
心をどう使うかで、人生の色彩は大きく変わるように思います。
身体の回復が難しい状況でも、心を柔軟にすることで、人は再び世界と関われる。
その瞬間に、生命力=気、が身体に宿るのではないでしょうか。
鍼灸の臨床でも、体の痛みや不調が和らぐと同時に、
「気持ちが軽くなった」「心を癒されにきているのかも」と言われることが、時々あります。
心身一如――この言葉の意味は、まさにその実感の中に生きていると感じます。
鍼灸サロンBIOでは、女性ひとりひとりのお身体や心に寄り添い、
身体も心も「癒える」場所で在りたいと思っています。
最近少し、心が疲れているかも・・・そんなことでも、構いません。
ぜひ、ご来院をお待ちしております。
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