秋は、芸術を味わうためにある季節
収れんと美しさの東洋医学的視点から
秋になると、空気が澄み、光が柔らかくなり、木々が色づき、ゆっくりと世界が深まっていくのを感じます。
東洋医学では、秋は「収れん」の季節。外へ広がっていたエネルギーが内側へ帰っていくときです。
その「内へ向かう力」と同時に、世界は最も美しい表情を見せてくれます。
秋の色彩が語りかけるもの
銀杏の鮮やかな黄色、枯れゆく木々の美しい茶色、もみじの深紅。澄んだ空気と共に色が際立ち、姿がくっきりと見えてくる。
外界がこんなにも豊かで美しいのは、私たちの心が”内面の美しさ”に意識を向けるように促されているからかもしれません。
春から夏にかけて外側に使っていたエネルギーを、内向きにゆっくりと変えていく時期です。
芸術を味わう 🍁
先日、ヘルマン・ヘッセが描いた『シッダールタ』の舞台を観劇しました。
舞台はまるで一枚の絵のようで、シンギングボウルを思わせる銅褐色の大きな器が空間に据えられ、その器を軽やかに登ったり降りたりしながら表現する役者さんたちに魅せられました。
また、川がひとつのテーマになる舞台を通して、器の内側を流れるように踊るダンサーのしなやかさは、まるで人生の”川の流れ”そのもののようでした。
華やかな演出ではなく、人の動きの力が美しさを表現しています。
シッダールタはインド仏教の神として広く知られていますが、この舞台では「ひとりの人間」としての苦悩や戸惑い、喜びが細やかに描かれていました。
その姿を追いながら、役者さんたちは私たちに問いかけてきます。
「あなたは、どう生きていくのか」
普遍的な問い。そして、誰もが心のどこかに抱えているテーマ。
だからこそ、古代インドの物語が現代の私たちへ深く共感できるのだと思います。
秋は”生き方”を見つめる季節 🍂
東洋医学で秋は「肺」の季節。
そして五行の感情である「悲」は、ただの”悲しみ”ではなく、ものごとの終わりや移り変わりを味わう深い情緒を指します。
これは、芸術が持つ本質と同じです。
外の風景の美しさが、内面の美しさへと通じ、芸術を感じ取ることができる。
一年の移り変わりの中でも、芸術を通じて内面を味わう「収穫」「実り」の季節です。
秋は、人生の旅を照らす季節 🍁
シッダールタの舞台は、まさに「人生という旅」を描いていました。
歩き、迷い、立ち止まり、また歩く。光の中でも闇の中でも、人は自分の足で前に進んでいきます。
季節が深まるほど、世界はもっと美しくなります。
景色の色、出会った作品……そのひとつひとつを味わってみると良いですね。
秋は、芸術を通して”今年の自分を見つめ直す収穫の季節”です。
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