🧘♀️ 未病とヨガ
先日、ヨガ講師をされているお客様と施術中に、こんなお話を伺いました。
ヨガを始めた当初は、「難しいポーズができるようになること」を目標にしていたそうです。ところが年月が経つにつれ、その目標は自然と変わっていったといいます。
「今は、基本的なポーズをどれだけ丁寧に行えるかを大切にしています。それが、将来の転倒予防につながる身体づくりになると思うんです」
この言葉は、まさに未病の考え方そのものだと感じました。
ヨガが育む三つの力
ヨガは単なる柔軟性やポーズの達成ではなく、次の三つを整える習慣としてこそ価値があります。
- バランス力
- 筋力
- 身体の感覚
特に、転倒は高齢期に身体的・心理的な自立を損なう大きなリスクですが、ヨガの継続的な実践は、バランスや可動性の改善に役立つ可能性が示されています。
研究が示すヨガの効果
実際、複数の研究で、60歳以上の人がヨガを行うと、バランスや身体機能が向上する傾向が報告されています。
例えば、2016年のメタ分析では、ヨガ介入が高齢者のバランスに小さい改善効果、身体の移動能力には中等度の改善効果をもたらすと示されました。また、ある研究では4週間のヨガ・プログラムが静的・動的バランスのスコアを改善したことが報告されています。
こうした論文をひとつ紹介するなら:
📄 Youkhana, S. ら (2016)
“Yoga-based exercise improves balance and mobility in older adults”
高齢者(60歳以上)に対するヨガ介入は、バランスと移動能力に有意な改善をもたらしたと報告しています。
これらの研究は「ヨガが転倒を直接的に防ぐかどうか」を断言するものではないものの、転倒の大きな要因であるバランスや柔軟性、筋力にポジティブな影響を与えるという点で、有力な証拠となっています。
📌 ヨガはまさに「未病」の実践
未病とは、
✔ 病気とまでは言えないけれど健康でもない、健康と病気の間にある状態
✔ 疲れやすい、だるい、眠りが浅いなどの自覚症状があるのに検査では異常が見つからない
という意味で、「今の自分を大切にすること」がその適切な対応法といえます。
ヨガは呼吸・集中・連動性のある動きを通じて、
✨ 身体機能を整える
✨ 心身の安定感を高める
✨ 日々の変化に気づく感性を育てる
という点で、未病対策としてとても相性が良いと言えるでしょう。まさに「将来の転倒予防」を見据えた習慣そのものです。
🌏 超高齢化社会とヨガの親和性
日本は世界でも有数の超高齢化社会に突入しています。こうした時代に求められるのは、単発的な健康法ではなく、生活の一部として無理なく続けられる習慣です。
ヨガは:
✔ 低負荷で安全に行える
✔ 呼吸や意識とのつながりが重視されるため、心の安定ももたらされる
✔ 年齢や体力に合わせて多様にアレンジできる
という点で、日本人にも馴染みやすい資質を持っています。
だからこそ、
👉 「健康寿命を伸ばしたい」
👉 「日常の感性・質を高めたい」
という思いを持つ方に、ヨガはとても親和性の高い選択肢となるのです。
🌱 ヨガ習慣を始めてみませんか?
難しいポーズができることを目標にするよりも、基本のポーズを丁寧に行い、自分の身体の声に耳を澄ますことが、未病の本質に近い習慣です。
私は朝は呼吸に合わせて流れるような動きを中心に行うフロー系、夜はストレッチ系のポーズを中心に行っています。時間は10分からと短めから、長くても20分位が習慣になりやすいと感じています。
まずはゆったり呼吸しながら、
🌿 3分の太陽礼拝
🌿 優しい立位バランスポーズ
🌿 寝る前のストレッチ系ポーズ
から始めてみましょう。
ヨガと鍼灸の違い ~能動と受動の健康法~
ヨガと鍼灸は、どちらも東洋から発祥した心身の健康を支える方法ですが、身体への関わり方にははっきりとした違いがあります。
● ヨガは「自分から行う」能動的な健康法
ヨガは、
- 呼吸を意識する
- 身体を動かす
- バランスを取り続ける
といったように、自分の意思と感覚を使って行う健康法です。
特にヨガは、
✔ 自分の体重(自重)を使って
✔ 左右差や前後差を感じ取りながら
✔ 筋力バランスを整え
✔ 柔軟性を高めていく
という点に大きな特徴があります。
「どこに力が入りやすいか」「どこが不安定か」を自分で感じながら整えていくことができるのが、ヨガの強みです。
● 鍼灸は「委ねる」受け身の健康法
一方、鍼灸は、
- 身体を預け
- 外からの刺激を受ける
という、受け身の健康法です。
だからこそ鍼灸には、
✔ 自分では気づきにくい緊張
✔ 無意識に続いている力み
✔ 左右差や反応の偏り
を、第三者の視点で見つけてもらえるという大きなメリットがあります。
自分では「普通だと思っていた」「気づいていなかった」身体の反応を、施術者が客観的に拾い上げていく。これは、どれだけセルフケアをしていても、一人では難しい部分です。
🌸 能動と受動、両輪で健康を育む
ヨガという能動的な健康法で、日々の身体の変化に気づき、自分で整える力を養う。そして鍼灸という受動的な健康法で、自分では見えない部分を客観的に整えてもらう。
この二つは、互いを補い合う関係にあります。
自分で動き、感じる習慣と、身体を預け、委ねる時間。その両方があることで、心身はより深く整い、未病の状態から健康へと向かう力が育まれていきます。
これからも、ご自身に合った形で、ヨガや鍼灸を日常に取り入れていただけたら嬉しいです。あなたの身体が、今日も明日も、心地よく在り続けられますように。
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